【環境衛生仮説】とアトピー性皮膚炎の乳幼児早期発病予防
西焼津こどもクリニック 院長 林 隆博
1996年(平成8年)以来当クリニックでは【衛生環境仮説】に基づいたアトピー性皮膚炎の乳幼児早期発病予防プログラムの開発に取り組み、1998年(平成10年)その成果を投稿したが、コントロールスタディーでないために科学的な根拠に乏しいとされ、殆ど顧みられることが無かった。アレルギー疾患の発病要素として【環境衛生仮説】が一般的に認められつつある今日、私の古いスタディーにも再発表の価値があると考えて本日の演題とした。
近年のアレルギー性疾患の増加の原因を出産と乳児期の衛生環境によるとする仮説。
・新生児は生来Th2細胞優位である。
・腸内細菌叢の発育遅延、エンドトキシンの低被曝によりTh1細胞の増加が遅れる。
・結果的にTh2細胞優勢のまま発育する事が近代のアレルギー性疾患増加の原因。
・皮膚および腸管上皮のマクロファージがToll様受容体を介してTh1細胞Th2細胞に
増殖刺激のシグナルを送っている。
・正常な皮膚腸管細菌叢はTh1細胞優位、真菌類の持続感染はTh2細胞優位に働く。
・環境中のエンドトキシンもTh1細胞優位に働いている可能性がある。
・他にTr細胞の発育遅延も関与の可能性。
・腸内細菌叢発育遅延によるTh1誘導遅延。
・真菌類等の感染によるTh2増殖誘導刺激。
・ビタミンH不足による上皮バリアの脆弱化。
・上皮バリア機能崩壊と炎症拡大の悪循環。
・Th2細胞優位下で進入した異物の抗原化。
・抗原接触によるアレルギー性炎症の発生。
・Th2増殖により全身性アレルギーへ拡大。
・ハイリスク児へのビフィズス菌経口投与。
・皮膚腸管の真菌感染を早期確実に治療。
・上皮バリア機能改善の為ビタミンHを投与。
・抗アレルギー剤投与によるTh2細胞抑制。
・食餌抗原の増加防止に離乳食遅延指導。
・低糖類高繊維食による腸内環境の改善。
・適切な抗炎症治療による悪循環の遮断。
・1996年8月より1998年8月まで2歳未満のハイリスク児
(湿疹左右対称2領域以上、家族歴濃厚)235名に乳酸菌生菌を投与。
・観察者105名中発病は9名(9%)で歴史的対照(35%)に比して有効と思われた。
・ビタミンH、抗アレルギー薬の併用が有効。
・2000年以後の成績では生後6ヶ月以前の早期のアトピーブロック開始が望ましい。
■1997年代の症例
ブロック開始4ヶ月の経過。皮膚炎の著名な改善を認める。
当初
4ヶ月後
■1996年と現在の外来風景の比較
1996年には殆どが重症の湿疹を主訴としていた。現在は湿疹を診る事は稀になった。
'96当時
現在
・乳幼児の皮膚アレルギー発病のブロックが可能であると考える。
・ハイリスク児には生後6ヶ月以前の総合的発病予防対策が望まれる。
・ビフィズス菌、ビタミンH、抗アレルギー薬と食餌抗原の回避、感染症対策とスキンケア、
適切な抗炎症治療が有意義と考える。
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